管理人はだれ！？

2016年8月6日「土曜日」更新の日記

保険金(解約返戻金)の受取額を運用成績に連動させるのが変額保険なら、当然、運用結果によって年金の受取額を変える「変額年金」も可能になります。保険か年金かは、保険金(解約返戻金)を一括で受け取るか分割で受け取るかの違いですから、当たり前です(本人が死亡したあとに保険金を年金化すれば「遺族年金」、本人が存命で解約返戻金1運用収益を年金化すれば「個人年金」になります)。そうすると、これまでの「定額年金」に比べて「変額年金」が登場してきてもおかしくはありません。じつは、「日本版401kプラン(確定拠出型年金)」というのがこの「変額年金」に当たります(本家アメリカの「401k」は、この年金が法律の401条k項に規定されていることから名づけられました)。日本では、保険料(拠出金)だけが確定していて受取額は未確定(運用結果次第)なので、「確定拠出」の名称がつけられたわけです。これに対して給付額(年金の受取額)が確定している従来の年金は「確定給付型」と呼ばれます。このように、「確定給付型」「確定拠出型」の2種類の年金を、それぞれ「定額年金」「変額年金」と読み換えるとずっとすっきりします。この「変額年金」を、税金や社会保障費を原資に国家が運営すれば「変額公的年金」、企業が従業員のために運営すれば「変額企業年金」、個人が生命保険会社の商品を購入した場合は「変額個人年金」です。加入者は、ローリスク・ローリターンの定期預金に預けるか、ハイリスク・ハイリターンの株式ファンドに投資するかを選択するのと同じ感覚で、定額年金に加入するか、変額年金に加入するかを選択するわけです。ではなぜ日本では、この新しいタイプの年金に「確定拠出型年金」などという直訳調の名前をつけ、「変額年金」としなかったのでしょうか。詳しいことは知りませんが、その理由のひとつが、日本において、「変額保険」という商品が過去に大きな社会問題を起こし、訴訟の山にうなされた保険関係者が、二度とこの名前を見たくないという気分になっていたからに違いありません。では、このようなスティグマを背負った「変額保険」とは、どのような商品だったのでしょうか。バブル期には、地価が高騰したために、相続税の支払いが大きな問題となりました。日本の相続税は最高税率が70％と異常に高く(2003年以降は最高税率50％)、東京都内にまとまった土地を持っている人は、とうてい現金では相続税を支払えません。かといって、不動産を売却すればキャピタル・ゲインに課税されますから、相続税と合わせて、踏んだり蹴ったりの事態になってしまいます。そのうえ日本人は不動産に対する執着が強いので、自分が死んでもなんとか子どもに不動産を残す方法はないものかと、誰もが必死に相続税対策を考えました。そのとき、「いくら高額の不動産資産を持っていても、多額の借金をしていれば、相続税評価額から借金の額が差し引かれるから、相続税は安くなるじやないか」と思いついた人がいました。10億円相当の土地を持っていても、9億円の借金があれば、相続税の対象になるのは差額の1億円だけだから、不動産を手放さずに納税することが可能になります。ところが、次に借金をした9億円で何をするかが問題になります。このお金を銀行に預けたり、株を買ったりするのでは、資産が土地から金融資産に移動するだけで、相続税の対象になることに変わりはありません。おまけに借金の金利を支払わなければならないのですから、バカバカしいだけです。そこで、この9億円で生命保険に入るという方法が考え出されました。一般の金融商品よりも生命保険のほうが相続税を安くできるからです。家族を生命保険の受取人にした場合、保険金で借金を完済したうえで、法定相続人ひとりにつき500万円の非課税枠も利用できます。しかしそれよりも、父親を契約者および保険金受取人、子どもを被保険者として生命保険に加入する方法が好まれました。父親が死亡しても保険契約は継続しますから、相続に当たってその価値を評価しなくてはなりません。相続税法26条は、こうした保険事故が未発生の生命保険契約を「既払保険料の合計額の70％から保険金額の2％を控除した額」で評価することとしています。9億円の保険料を16支払っても、約7割＝5億6000万円程度しか相続税の対象にはならないのです。これで、バブル期になぜ相続税対策に変額保険が使われたかがわかります。仮にバブルが崩壊せず、9億円の投資金額が時価20億円に膨らんだとしても、相続税対象額は5億6000万円なので、残りの14億円超がまるまる非課税になります。当時は「日経平均10万円」説も真顔で唱えられていましたから、借金と変額保険の組み合わせこそが「究極の相続税対策」と考えられたのです。※〔著者注〕2003年税制改正で「相続税法26条」の廃止が決まったため、この節税法は利用できなくなりました。

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