管理人はだれ！？

2016年10月13日「木曜日」更新の日記

東京建物のマンションには、他の大手不動産会社の物件からはあまり感じられないような、ゆとりというものがある。それはおそらく、新宿センタービルや、小田急百貨店がテナントとして入居する東京建物新宿ビルディングといった大型ビルを保有する大家さんだからこそ維持できるものなのだろう。マンション専業もしくはマンション事業に収益の偏った他の不動産会社からは、バブル崩壊以後、余裕やゆとりなど微塵も感じられないのだから、この点は貴重である。 「ロワヴェール」「グランヴェール」「アールヴェール」「プランヴェール」「プリヴェール」という五つのブランドを持つ東京建物は、会社として平成八年一〇月に創業一〇〇周年を迎えた。旧安田財閥系である東京建物のマンション第一号の竣工は、昭和四三年のことだ。ちなみに東京建物の社長は、ほとんど富士銀行の出身者である。この会社のマンションの特徴は、購入者にわかりやすいセールスポイントのある物件が目立つ、ということだ。ペットを飼えるというのを宣伝文句にした「プランヴェール入間武蔵野」や、バルコニーに張り出す「サンポケット」と名付けられたサンルームを計画した「プランヴェール勝田台」、シングル女性向けマンションとして好評を得たことが新聞記事にまでなった「プリヴェール目黒行人坂」、一時期その先行きが危ぶまれた定期借地権付きマンションの人気を盛りかえらせた感のある「プランヴェールEX」、可動間仕切りで家族構成の変化に合わせて間取りを自由に変更できるというヴェールフレックスーシステムを採用した「プランヴェール鶴巻サザンコート」や「プランヴェール鶴巻グランコート」、「プランヴェール多摩川南久地の丘」、「プランヴェール西宮門戸」など、特徴を一言で説明しやすいマンションが多い。特徴の善し悪しを論ずる以前に、いまは特徴の見つからないマンションが多いのだから、東京建物のこういう姿勢は購入者にとってありがたいことだ。もっとも、購入者にわかりやすいセールスポイントを掲げるという姿勢は、一〇〇周年を迎えたことで新たに打ち出した企業方針ではなく、もともと束京建物の中にあったようだ。たとえば、公庫融資付き分譲をいち早く収り入れた会社でもある。昭和四五年のことで、当時は購入希望者が四泊徹夜して並んだという逸話が残っているほど好評だったようだ。公団のアパートよりいいものを、公団の分譲価格並で、という社内方針が、購入者層に広く支持されたようだ。近ごろ流行りの、子育てを支援するマンションという企画でも、東京建物はずいぶん昔から実績を残している。 最近の「子育てによいマンション」は、建物の屋外遊び場スペースとしてプレイロット、屋内スペースとしてキッスルームという施設を設けているが、東京建物の物件ではすでに昭和四〇年代に子どものためのプレイロットや共用トイレ、子ども用自転車置き場といった施設が設けられていた。せっかく先取りや、他との差別化という企業姿勢のある会社なので、私はやはりもつとマンション生活そのものに新しい提案を試みてほしいと期待してしまう。東京建物の物件には、各住戸の内装のグレードや設計細部の納まりに、武骨な点が目立つのが気にならないではないが、そんな細かなことなど払拭してしまうような、マンションの企画が買う人を選ぶような提案をどんどんしてほしいものだ。

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