管理人はだれ！？

2017年4月2日「日曜日」更新の日記

　現場に行ってみると、廃材が堆く積もっていた数日前とうって変わって、室内は小ざっぱりして、壊し作業に取りかかっていた若い衆もいない。「あれ、工事が始まってまだ間もないのに、ずいぶん静かですね」確かに家の前に停まっていたＡ工務店のライトバンも見あたらない。「ごめんください」奥のキッチンから坂本冬美の演歌が金づちの音とともに聞こえてきた。コンビニで買った缶コーヒーの入った袋をたずさえ、厚底の長靴を履いたまま廊下を進むと、見知らぬ新顔の中年大工さんが石膏ボードを壁に打ち付けている。その後ろで携帯で打ち合わせをする大工、星さんが私たちに気付き、「解体終わりましたよ」と言った。私は初めて見る大工さんに施主ですと挨拶して、コーヒーを渡す。上司はへえ、ずいぶん変わったなあと、ひとりごとを言いつつ、キョロキョロしている。ひとまず店舗となる和室をのぞいた。畳は全て撤去され、押し入れや洗面所と和室を仕切る北側の壁も取り払われている。いきなり開放感が出た。なるべく店となる部屋を広げたいという希望はかなった。こうなると気がかりなのはブレーカーだ。店とキッチンそれぞれに小さなエアコンを入れ、どちらからもブレーカーが上げられるようにすること。かつ、アンペアを50に上げること。電気や水道やガスは、それこそ専門業者頼みとなってしまうから目が離せない。「冬の寒さはしのげても、夏の猛暑は熱中症になりますからね」と、上司は私が書いた指示書に目を落としていた。そこに専務がぺこぺこしながらやってきた。「やっぱり、電柱からの引き込み工事を依頼しないとだめみたいです」上司が眉をつり上げたので、専務は私もあちこち聞いた結果ですが、と前置きした。「簡単に言うと、現在、容量が30アンペアしかないこの家は、電柱から電線が２本しか来てない。それ以上上げるとなると、電柱からさらにもう１本引いて、線を３本に増やすしかないんです。そうすれば40でも50アンペアでも上がります」「でも、住まいのほうにブレーカーを設置したら、万が一、昼問、雷が落ちて停電になった場合、店番をしている人は玄関から家の奥まで入って復旧するしかない。それって面倒ですよ」私はあらゆる想定を思い巡らした。「そうなんです。だから容量を上げて、その上でブレーカーを２ヶ所に付けるんです。洗面所にひとつ回線を引き回して、店のトイレにもうひとつとブレーカーを分けておけば、店のブレーカーが落ちても、居住区に駆け込まず、自分で上げられます」つまり、容量を上げて分電するということだ。工事費用はかかって10万円という。ひとかどの追加費用が発生するが、電子レンジ、洗濯機、炊飯器、エアコン。このいずれかが同時に作動するたび、ブレーカーが落ちたのでは騒動になる。住まいの中に店舗を作るのだから、容量を上げて分電することは、致し方ない。さっそく工事を依頼した。

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