管理人はだれ！？

2017年4月9日「日曜日」更新の日記

　　一難去ってまた一難。作業工程表によると、新しいキッチンの取り付け工事が始まる予定になっている。全てが順調に進んでいるかと思いきや、またも大変な問題が持ち上がった。久しぶりに連絡をしてきた専務が怯えたように声を震わせている。「大変です。工事を中断しなければならなくなりました」突然のことに二の句が継げなくなった。「どういうことですか」「ガス漏れです。実は作業をしていたらガスの検針に来た係員が、「ここ、誰も住んでいないのに、針の振れがおかしい」と、騒ぎ出して、それで調べたら、本当に漏れていたんです。取り急ぎ証拠写真も撮りましたので、現場に来て下さい」取るものもとりあえず、中央線に飛び乗って吉祥寺に向かった。頭の中は混乱していた。気付かなかった。いったい、どのくらいの期間、漏れていたのか。職人がタバコを吸うなどして、もし引火していたら、小さな家は吹き飛んでいたかもしれない。空き家になっていた期間は長くはなかったのに、よく今まで無事故できたものだ。専務は建物の裏側からひょっこり出てきて、もう、管がボロボロなんですよと、私の顔を見るなり一気に話し始めた。「携帯で撮ったんですが、見て下さい」画面にはフジツボが付着した磯の石を思わせる、でこぼこした老朽ガス管が写っていた。少しの震動でもぽろぽろと砕けそうなこの管を、都市ガスが通っていたとは。「幸いにも、いわゆる道路側の本管から家のガスメーターまでの距離はそれほどないんです。道路から地中を通って床下のところに出てるんで、工事も手間はかからないでしょう。それにしてもひどいもんです」専務が言うには、劣化したこのフジツボ管は、家が建った昭和50年代のものらしく、敷地内でガス漏れが起きているとしたら、建物までの二次管だけでなく、道路から敷地内までの一次管も全て直した方がいいという。「なんとかパックと東京ガスが言っていましたが、何しろそっちが安いそうです。ご予算のある方は劣化したガス管を怖がって、リフォームでオール電化に替えてしまうそうで、それを阻止するためにもお得なパックを出しているみたいです」費用は20万円前後らしいとのこと。何ということだ。だが、背に腹はかえられない。いつ穴が空くか分からないフジツボ管の上で、お店の夢もないだろう。腐食が進んだフジツボ管は、通称白ガス管と呼ばれる亜鉛メッキ鋼管で、昭和30年代から50年代に一般的に使われていたものだ。地中に埋設すると腐食しやすく危険なため、今では腐食がなく地震に強いポリエチレン管が使われている。「工事をすれば事故の心配はないんですね」「大丈夫です。東京ガスが保証しますから。但し、その間リフォームエ事は中断ですが」申し訳なさそうに専務はガス管が潜った地面を眺めつつ、「思うにこれは問題ですね。もし、これを売り主さんが知っていたら、あちらの責任ですよ。検針の時にこんなにガス代が高いのかって、普通は気付きますから」と言った。「でも、古家付き土地ですから、建物の不具合は免責だそうですが……」「聞くだけ聞いてみたらどうですか」専務に説得されたわけではないが、この物件を仲介してくれた営業マンにガス漏れが起きていたこと、工事費用の件で売り主さんに相談して欲しいことを連絡した。

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