管理人はだれ！？

2017年4月12日「水曜日」更新の日記

　風邪をひいた星大工の代わりに、当分ヨドバシさんという大工が入りますと、専務からＦＡＸが流れてきた。すでに中間金の支払いも終え、確かに確認いたしましたと、ワープロで打ってある。だが、大工も代わり、工事を進める人数も当初はふたりと言っていたのに、大丈夫だろうか。来客がたて込み、なかなか仕事を抜け出して現場に行けない。どうやって時間をやりくりすべきか思案していたところ、上司が新聞の切り抜きを持ってやってきた。「住宅のエコポイントが今日から始まるそうで、申請すれば最高で工事費のうち30万円が戻るらしいです。専務に聞いてみたらどうですか」30万円が戻るのならと、記事を読んでみたが、いまひとつよく分からない。知り合いの不動産業者に尋ねると、「住宅のエコポイントは家の断熱性能を上げようというところから始まっているから、あの家だと内窓を付けるとか、窓ガラスをペアガラスにするとか、そういうプランでもあれば申請してもいいんじゃないかな」という。窓をどうこうするなどは今回のプランには入っていない。すきま風の問題より、いかに行き違い無く工事を成し遂げるか、現実はそちらに傾いている。地獄耳の山田君は私たちの会話から気を利かせ、住宅アドバイザーの平生氏に尋ねてくれたようで、焦り口調で進言してきた。「住宅エコポイント用に用意された1000億円の国家予算は、早い者順ですから、ぐずぐずしてるとなくなっちゃって、打ち止めになるらしいですよ」と、わが事のように早期の申請をと急き立ててきた。日本の家がリフォームへと急速に動き始めている。けれど、そこに違和感を感じるのはなぜだろう。キャッシュバックシステムのようなエコポイントは台所、浴室、トイレなどの追加工事や、百貨店の商品券、旅行券などに交換できるという。久々の打ち合わせの折、専務に尋ねてみると、30万円戻すためには工事代そのものもつり上がるという。「それだけのご予算があれば皆さん、お風呂やトイレを直したり、キッチンを交換したりされますよ。屋上緑化、太陽光発電は高いですし、屋根の太陽電池だって、だいたい３００万円はかかる。それにお金を使ったら、他は何もできない。おしまいなんです」「確かに、３００万円はほぼ、私のリフォーム予算ですものね」そう考えると、自分には関係ない絵空事のように思えた。「エコつていうのなら、シャワーをやめて溜め湯に入るとかすればいい。私は貧乏性なんで、そんなことを考えるんです。エコポイントで商品券配るより、耐震工事の費用を国が持って、人並みの生活ができる家を増やして欲しいと」専務はいつになく思い詰めた表情で言った。考えてみれば、住宅の性能を向上させようと考える人は家を所有する人だ。だが、住宅所有者の中には、1981年以前の旧耐震基準で建てられた築30年以上の中古マンションに住む人もいる。修繕や建て替えの法整備が進まない日本で建て替えとなれば、老朽マンション暮らしの住人が資金の持ち出しを迫られるのは必至だ。2008年時点で東京都内に約５万戸あった築40年以上の老朽マンションは、10年後に５倍近い24万戸に膨らむといわれる。住民の高齢化や資金力不足は如実に建物の劣化に現れる。このような矛盾は世界的な傾向で、金持ちは車でも家でもニューモデルを買い、エコにつなげる。たとえばアメリカではかつてガソリンを食う大型車が主流だった。ガソリンは今より安かったため、人々はキャデラックなど大型アメ車を維持できたが、今は燃料も値上がりし、省エネのコンパクトなハイブリッドカーに買い換えている。

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