管理人はだれ！？

2017年4月22日「土曜日」更新の日記

　４月に入ったある朝、出社すると首都圏のマンションがまた売れ始めたそうですよと、山田君がインターネットニュースを見せてくれた。それによると、2009年は景気悪化や不動産市況の悪化で、販売は低迷したものの、実際には在庫処理が一通り終わって上向きになっているという。2010年３月に入ってからは都心部を中心に大型物件が次々に登場、そのほとんどの物件が即日完売というから驚きだ「でも信じられないな、不況と言いつつ日本国最後の武器は貯金なんですね。平均価格が５０７０万円ですよ。世の中にはこんな高いマンションを即決で購入できる人がごまんといるのだから。まだまだ日本人はお金を貯め込んでいるんですね」不動産知識の乏しい、持ち家に関心の無い山田君だったが、いつしか同年代の若者が決して言わない大人びた発言をするようになってきた。ただし、５００万の老朽マンションだの、3000万以下の小さな戸建てだのを市場価格の基準と考えているきらいがある。素直といえなくもないが、来客時に得意になって我が社は吉祥寺に５００万のマンションを取得したと自慢するので、話を聞かされた相手は目を白黒させ、何と返答したらいいか困っているようだった。そんな彼を見ていると、本当にすべてを理解した上で語っているのだろうかと心配になる。３月下旬。応援大エヨドバシさんは相変わらずひとりで頑張っているんだろうか。点検も兼ねて山田君を伴い小さな家に向かう。今日は家の奥から美空ひばりが流れている。ヨドバシさんはキッチンの床にあぐらをかいて水筒のお茶を飲んでいた。「あれ、ご休憩ですか」山田君がなれなれしく尋ねると、近所から文句言われて、ちょっと音止めてんのよ、こんなのしょっちゅうとタメ囗で返す。「朝から珍しく星大工が来て、釘打ち機でテケテケテケテケテケテケテケ……とやったんですよ。それがちょっと長くて私が怒られた」ヨドバシさん日く、ここはまだ戸建てだからいいけど、マンションになるともっと大変だ。コンクリートの場合はちょっとやってもデケデケデケデケ……と、隅から隅まで全部響いてしまい、現場は苦情の嵐だという。「リフォームしますからって連絡して挨拶回りすると、いいですよって言われる。でも、実際工事が始まるとたくさんのクレームが出て結局中止になったり、壁作るのをあきらめたり、こんなの日常茶飯事ですよ」工事現場に責任者が常駐しているわけでもないから、職人達はこうして隣近所の様子をうかがいながら工事を進める。「昔はお互い様ですって言ってもらったけど、今はそうもいかない。トンカチで木の家をトントン叩いていた頃とは違うんですから」水筒のお茶をカップに注いで語り出すヨドバシさんの顔のしわが、今日はくっきり見える。

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