管理人はだれ！？

2017年4月23日「日曜日」更新の日記

　思えばマンションリフォームの場合は、管理組合や理事長に話を通す事前手続きが結構かかり、床材の厚さやタイプまで指定されるため、材料選びも難航した。その点、一戸建ては楽かと思いきや、東京のような密集した住宅地では、一触即発で近隣とのトラブルになりかねない。この家の周辺は同じくらいの狭小住宅が建ち並んでいるが、偶然なのか、うちが工事に入ると向かいとお隣の家がリフォームを始めた。日中は何台もバンやトラックが連なり、どの車がどの家の職人のものかも判別がつかない。星さんが間違えて道具を持ち帰った時も、「オーイ、大工さん。ボルト貸してくんねえか」と、ヨドバシさんはその辺で休むよその大工に声をかけていた。騒音問題も含めて、同時にリフォームを始めるメリットもあるようだ。私道に面した戸建てをリフォーム中の友人は、近所の人達が道の真ん中に停めた自転車を、家の前によけてもらうように頼まなきゃいけないと愚痴っていた。普段生活する中で気になってはいたけれど、見逃していたマナーや人間関係が工事という変化によってクローズアップされる。地下駐車場を作って車の出し入れが始まれば、道路に放置された植木や自転車は通行の妨げになると、頭を抱える友人。そうこうするうち、現場にやってきた親戚の子どもが自転車に足を引っかけ大ケガをしたことから、全ては撤去されたという。ある時、向かいの家を工事する大工さんに声をかけられた。「ずいぶん変わった家を作るんですね。うちは相変わらず賃貸リフォームばかりで、こういう依頼がない。一度でいいから自分たちもやってみたいですよ」都内で小さな工務店を経営しているという大工さんは、缶コーヒーをすすりつつ、いやあ洒落てるよと工事の様子を身を乗り出して見ながらベタボメする。こちらも気分良くなる「1000万円くらいかかってるんだろーなあ」ぎょっとした。そんな風に見えるのか。「チマチマしたんじゃなく、うんと金かけられるリフォーム、私もしてみたいですよ」私は二の句が継げず、けっこう大変ですよとだけ言って退散した。お金を注ぎ込めば大胆で、個性的な家づくりができると思っている人々は、施主ではなく、依然業者にも多いのだ。彼らはプロなのに、少ない費用だからこそ創意工夫を凝らした独創的なリフォームができると考えられないとはガックリだ。ともあれ、窓という窓が開け放たれ、北風が吹き込む小さな家の現場で、ホコリにまみれ、堅牢な柱や壁と格闘し、木片と石のかけらを黙々と運ぶヨドバシさんらの姿に、いつもたくさんのことを考えさせられる。

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