管理人はだれ！？

2018年2月17日「土曜日」更新の日記

　拙宅の建築中にトラブルがあったおかげで、メーカーの支店長氏と何度も会い、貴重なお話を聞くことができた。 　そのひとつに、建築現場の抜き打ち視察がある。 　支店長氏が紹介したお客の場合、ご本人が自ら現場を抜き打ちでチェックするというのだ。 大学院で建築を学んだ方なので、専門的な調査中心かと思ったら、 　「まず、掃除がきちんとされているかを見ます」という返事だった。 　私も工場で生産管理を担当していた経験をもつが、整理、整頓、清掃といった標語が壁に貼られていたものだ。モノ作りの基本は同じといえよう。 　この支店長氏の発言に、メーカーが指定工務店に委託する形態の特徴が出ている。 　よい点としては、工事する側とメーカーの間に緊張関係が生まれる。きちんと施工しないとプロからきびしい手直しを要求される。このプレッシャーが手抜きのない工事につながることもあろう。 　このメリットはマイナス面と裏腹の関係にある。メーカーの工事担当者がいつも見張っているわけではない。もし5軒担当しているなら、毎日現場を回ったとしても1時間滞在できるかどうか。目の届かぬ所で作業する時間の方が長いのである。だからこそ件の支店長氏も抜き打ちという作戦を使っているのだ。 　拙宅のケースでも、屋根替りのシートがはずれているのは私が発見した。日曜日の朝だったからメーカー担当者が休みというのは仕方ないが、もし前日からの雨が降り続いていたと想像するだけで怒りがこみ上げてきた。このような場合、メーカーが工務店に連絡しないと対策をとれないので、どうしても後手に回ってしまう。他メーカーの仕事もしている工務店だと、スムーズに行かぬ場合もあるだろう。例えば、この日は他の現場へ出向いているなど。 　直接責任施工、が売りのメーカーでもこうなのだから、工事担当が少なかったり存在しない販売会社でコトが起きると、話はややこしくなる。 　その点、請負ったメーカーが直接職方を監理している方が安心感はある。人と人とのパイプもしっかりしているだろうし、専属なら運命共同体としての意識も強い。 　ただ、この方式がよい所ばかりと決めつけてはいけない。 　同じ会社やグループの仲間ということで、検査を甘くしてしまったら歯止めが効かない。先ほどの、直接責任施工に見られる、かまどが違うことによるテンションは期待できないからだ。上場会社の監査役のように、その会社の出身者だと、きびしい意見をつけにくいのと少々似ている。 　2つの管理方式を見てわかるように、このやり方がベストといえるシステムは存在しない。 　では、あなたの家づくりでどうすればよいか。そのメーカー（又はディーラー）の施工管理の仕組みを知った上で、次の申し入れをするのだ。 工程表を契約書に添付し、どのタイミングで、どういう検査をし、どんな形で報告書を出すか明記して欲しい。 　工程表には、主な工事名と内容が年表形式に書いてあるのが望ましい。報告書には主要な個所を撮影した写真をつけてもらおう。あとあとの証拠にもなるし、現場から離れている所に仮住まいしている方には便利だ。 　しかし、これだけで安心してはいけない。あなた自身で抜き打ち検査をやるのだ。私がとった方法は、着工から上棟までの間の毎日曜日の朝、現地へ行き塀の外から写真を撮った。基礎工事の途中や配管工事の状況は、その都度写しておかないと、後で問題が起きたときに証拠として使えない。 　敷地のなかに入らず外から写したのは、工事の人がいなかったからだ。たとえ自分の土地でも、工事中は先方の監理下にある。いい換えれば全責任が請負者にあるということだ。 　素人が生半可な知識で現場を見ても手抜きは発見できない。とプロの建築家はおっしゃる。 その通りなのだろうが、生涯一度の買い物をする側としては、手をこまねいてはいられない。 　メーカーに報告書を出させ、自らカメラマンになるのは最低限の自衛策なのだ。

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