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「フロント」への進出は慎重に

2018年4月24日「火曜日」更新の日記

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 土地が限られた都会では、住居ばかりでなく建物はすべて、上に(空高く)、下に(地下深く)、前方に(海岸線を前に)押し出されるようになります。  この傾向は、特にパブルと呼ばれた約10年前(90年代初め)までが著しく、それぞれスカイフロント、ジオフロント、ウォーターフロントという用語まで生まれて、それはそれは鼻息の荒いものでした。フロントというのは、自動車のフロントガラスと同じ「前面」を意味する言葉です。スカイフロントは都市の建物をどんどん高層化すること、ジオフロントは地面の奥深くということで、建物でいえば地下にも深く階数を重ねることになり、内容的にはスカイフロントと同じことを意味します。ウォーターフロントは、東京の臨海副都心や関西空港に見られるように、海岸を埋め立てたり、人工の島を造ったりして陸地を広げ、建物を建てていくことです。  人工的な空間をつくって生活圏を広げていく場合は、そこで営まれる活動はビジネスと呼ばれる分野に限って、一般庶民の生活の場はいきなりこのような所につくるべきでありません。  バブルはなやかなころ「大高度都市構想」や「大深度地下利用」に関するさまざまなプロジェクトが、官、民を問わず発足したことがあります。  高さが100メートルや200メートルどころか1キロとか2キロに達する巨大構造物を建てる話や、地下深い所を走る高速鉄道の新設や、地下工場、倉庫、中には深い深い縦型トンネルを掘って、無重力の落下実験装置の企画などもありました。  政府内でも景気の良い開発側の企画が一回り出た後で、当時の厚生省は遅ればせながら、地下居住の健康問題について検討を始めました。  わたしも委員会の一員として参加したのですが、厚生省の役人の中には、地下に限らず、住まいのことはすべて建設省に任せればよいのでは、とか、地下は静かで、冬は暖かく、夏は涼しいから、病院や老人ホームに向いているのではないか、という実に無責任なことをいう人々がいて、これは大変なことだという思いを抱きました。  地下という特殊な環境は、光、温熱、音、空気、生理・心理というどんな面を取っても決して「健康的」な住環境とはならないことは初めから分かっていました。が、一応いろいろな理由付けをして、「慎重な対応をしなければならない」という結論を下したのでした。  この報告が出された前後から、バブルはしぼみ始めたものですから、「フロント」への住まいの進出は、幸いなことに「空」と「水」の一部を除いて、ほとんど実現されずに終わりました。  アメリカの同時多発テロを引き合いに出すまでもなく、人類が未経験な「フロント」への進出には、どんな思いがけないことが隠れているか分からないのです。古いといわれるかもしれませんが、こと住まいに関しては、「技術」の過信には、あくまで慎重でありたいと思います。

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