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解約申入れ後に正当事由の追加は許されるか

2019年6月12日「水曜日」更新の日記

2019-06-12の日記のIMAGE
隣町の某自動車修理工場に勤めている次男が、結婚することになり、収入がそれほど高くないので、私の持家の借家入に貸家を明けてもらって、そこに次男夫婦を住まわせようと考え、解約の申入れをしましたが、相手から拒絶されたので、簡易裁判所に調停の申立てをしました。ところが、最近、次男の会社が倒産し、次男はその貧家で食堂を開きたいといっています。この事由を正当事由として追加できますか。解約の申入れは、六か月前にこれをしなければなりません(借家法三条、借地借家法二六条)。この意味は、解約の申入れは、六か月の経過によって効力を生ずるということです(最高裁・昭和二五・二・一四判決、最民四・二・二九)。そこで正当事由による解約が有効であるためには、どのような時期にそれが存在すればよいかが問題になります。この点について、つぎのような学説があります。①解約申入れの時期から六か月継続して存在すること。したがって、期間後に生じた事情は、正当事由の存否の判断材料にはならない。②解約申入時から事実審(控訴審)の口頭弁論終結時まで、正当事由が存在しなければならない。③正当事由が解約申入れのときになくても、口頭弁論終結時までに具備されればよく、口頭弁論終結時に正当事由が具備したときは、それから六か月後に賃貸借は終了する。判例は一貫して①の立場をとっていますが、多くの学説は反対して、口頭弁論終結まで正当事由が存続する必要があるといっています。しかし、借家法一条ノニが設けられた沿革を考えると、正当事由は、解約申入れから六か月間存続すれば十分だという・の場合が妥当だといえるでしょう。つぎに、正当事由を構成するいろいろの事実は、固定的なものでなく、時間の経過で流動的なものです。したがって、解約の申入後六か月存続しなければならない正当事由が、実は、その時点で存在せずに、訴訟の進行中に具備されることがありうるわけです。判例は、裁判なり調停なりが進行している場合は、それ自体で賃貸人は、黙示的に継続して解約の申入れをしているとみなしていますから、解約中入当時に正当事由がなくとも、明渡訴訟や調停進行中に正当事由が備われば、そのときから弁論終結当時までに六か月を経過していれば、解約の効果が認められます(最高裁・昭和二九・三・九判決、最民八・三・六五七)。お尋ねの件について、息子さんの結婚を理由にした明渡しの調停中に。食堂を経営するための新しい事情を、解約の正当事由として追加することは許されます。食堂を開くためにその建物が必要だから明け渡してもらいたいと、調停の席上で追加して述べたときから六か月を経過すれば、結婚を理由とする解約が認められなくても、事由が認められることがあるわけです。また、結婚と食堂開業が不可分的な事情であれば一括して考慮されて判断がなされます。

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